「リアル~完全なる首長竜の日~」公開中
2013.06.27
佐藤健×綾瀬はるかのW主演作「リアル~完全なる首長竜の日」。
旬な2人の顔合わせということで、観たいと思う人と、
逆に、それが理由で観なくていいか、と考える人が両方いると思うんだけど。
これは、いわゆるアイドル映画とは一線を画すものでして。
なんでって、監督が黒沢清だから! 迷ってる人は、ぜひ観てね。
ⓒ2013「リアル~完全なる首長竜の日~」製作委員会 ※画像転載禁止
東宝配給 札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌ほかで公開中
公式サイト=http://www.real-kubinagaryu.jp/
浩市(佐藤)と淳美(綾瀬)は、幼なじみで恋人同士。
だが1年前、漫画家の淳美は、自殺未遂をはかり昏睡状態に陥った。
浩市は[センシング]という最先端の医療で彼女の脳内に入りこみ、淳美を目覚めさせようとする。
しかし「なぜ自殺したの」と問う浩市に、意識の中の淳美は
「首長竜の絵を探してきてほしい」と頼むばかりだった…。
これは黒沢清が初めて撮る、メジャー配給作品じゃないかと思うんだよ。
ヨーロッパ等、海外ではきわめて評価の高い監督で、
私がいちばん好きな作品は「トウキョウソナタ」(2008年)かな。
ジャパニーズホラーというジャンルで言うと、中田秀夫が第一人者かも知れないが
「ふつうの映像なのになぜか怖い」のが黒沢清である。
しかも「とても美しい映像なのに」怖い。
たぶん光の使い方と構図が、卓越しているのではないか。いわゆる美術的センスだよね。
で、ふだんローバジェットの作品を撮っている監督が
メジャー配給で撮るなら「そこでしかできないこと」をやりたいわけで、
(ちなみに是枝裕和監督は、初めて松竹で撮ることになったとき、
時代劇を選んだ。本格時代劇もまた、予算がないと絶対撮れないもののひとつだ)
それが本作でいうとCGである。
慣れない監督がCGに初めて挑むと、なんじゃこりゃ的なちゃちい仕上がりで失笑を買い、
逆効果になりがちなんだけれども、今回の場合それはない。
初めてにしては、かなりいいセン行ってると思うよ。
近未来という設定も、黒沢監督の映像に合っている。
また、脇で出演する中谷美紀やオダジョー、小泉今日子は
皆これまでに黒沢作品への出演経験があり、相互に信頼関係が結ばれているのだと思う。
テーマだけ聞くと「インセプション」に似てるけど、あんなに難解ではない。
頭でストーリーを追うというより、スクリーンの隅々まで目を凝らし、
その世界の中に入った感覚で楽しんでみてほしい。
「リアル~完全なる首長竜の日~」公開中
6月1日 公開
2013年日本東宝2時間7分
黒沢清監督
佐藤健、綾瀬はるか、中谷美紀、松重豊、オダギリジョー、小泉今日子ほか 出演
WORD WORK 矢代真紀(やしろまき)
1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。