映画のミカタ

「リアル~完全なる首長竜の日~」公開中

佐藤健×綾瀬はるかのW主演作「リアル~完全なる首長竜の日」。

旬な2人の顔合わせということで、観たいと思う人と、

逆に、それが理由で観なくていいか、と考える人が両方いると思うんだけど。

これは、いわゆるアイドル映画とは一線を画すものでして。

なんでって、監督が黒沢清だから! 迷ってる人は、ぜひ観てね。

ⓒ2013「リアル~完全なる首長竜の日~」製作委員会 ※画像転載禁止

東宝配給  札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌ほかで公開中

公式サイト=http://www.real-kubinagaryu.jp/

 

浩市(佐藤)と淳美(綾瀬)は、幼なじみで恋人同士。

だが1年前、漫画家の淳美は、自殺未遂をはかり昏睡状態に陥った。

浩市は[センシング]という最先端の医療で彼女の脳内に入りこみ、淳美を目覚めさせようとする。

しかし「なぜ自殺したの」と問う浩市に、意識の中の淳美は

「首長竜の絵を探してきてほしい」と頼むばかりだった…。

これは黒沢清が初めて撮る、メジャー配給作品じゃないかと思うんだよ。

ヨーロッパ等、海外ではきわめて評価の高い監督で、

私がいちばん好きな作品は「トウキョウソナタ」(2008年)かな。

 

ジャパニーズホラーというジャンルで言うと、中田秀夫が第一人者かも知れないが

「ふつうの映像なのになぜか怖い」のが黒沢清である。

しかも「とても美しい映像なのに」怖い。

たぶん光の使い方と構図が、卓越しているのではないか。いわゆる美術的センスだよね。

 

で、ふだんローバジェットの作品を撮っている監督が

メジャー配給で撮るなら「そこでしかできないこと」をやりたいわけで、

(ちなみに是枝裕和監督は、初めて松竹で撮ることになったとき、

時代劇を選んだ。本格時代劇もまた、予算がないと絶対撮れないもののひとつだ)

それが本作でいうとCGである。

 

慣れない監督がCGに初めて挑むと、なんじゃこりゃ的なちゃちい仕上がりで失笑を買い、

逆効果になりがちなんだけれども、今回の場合それはない。

初めてにしては、かなりいいセン行ってると思うよ。

 

近未来という設定も、黒沢監督の映像に合っている。

また、脇で出演する中谷美紀やオダジョー、小泉今日子は

皆これまでに黒沢作品への出演経験があり、相互に信頼関係が結ばれているのだと思う。

 

テーマだけ聞くと「インセプション」に似てるけど、あんなに難解ではない。

頭でストーリーを追うというより、スクリーンの隅々まで目を凝らし、

その世界の中に入った感覚で楽しんでみてほしい。

「リアル~完全なる首長竜の日~」公開中

6月1日 公開

2013年日本東宝2時間7分

黒沢清監督

佐藤健、綾瀬はるか、中谷美紀、松重豊、オダギリジョー、小泉今日子ほか 出演

矢代真紀

WORD WORK  矢代真紀(やしろまき)

1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。