映画のミカタ

「そして父になる」公開中

しばらく更新していなくてすみません。

公開から日が経ってしまいましたが、ロングラン中の

福山雅治主演「そして父になる」のレビューを。

ⓒ「そして父になる」製作委員会 ※画像転載禁止 ギャガ配給

札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌ほかで公開中

公式サイト=http://soshitechichininaru.gaga.ne.jp/

脚本・編集も手がけた是枝裕和監督とは、これまでインタビュー等で何度かお会いしていて、

モノづくりに対する姿勢、視点ともに共感を覚え、尊敬できる1人だ。

柳楽優弥を世に送り出した「誰も知らない」(2004年)は傑作である。

今回、福山のほうから監督にアプローチしたと聞き、

すでに人気とスター性を兼ね備えた彼が、今、心ひかれる何かが、

その「視点」にあったのではないか、と思ったりした。

 

この作品にとって一番良かったのは、カンヌ国際映画祭での受賞時、監督とともに福山が現地にいたことである。

それによって、受賞シーンがメディアに何度も取り上げられた。

これがもし監督だけのビジュアルであれば、回数は減っていたに違いない。

すでに興行収入は25億円を超えた。良かったなあ。

是枝作品は、海外での評価が高くてもこれまでビッグヒットに結び付いてこなかった。

初めてメジャー配給で撮った、岡田准一主演の時代劇「花よりもなほ」も

とても良い作品だったが、興行的には惨敗だったのだ。

福山自身が自分ら出演を希望した作品だからこそ

番宣でテレビにも出たのだろうし、彼が出たからこそ、視聴率も取れただろう。

その相乗効果が生んだヒットだったと言える。

エリートサラリーマンとして都心で何不自由なく暮らす野々宮良多(福山)、みどり(尾野真千子)夫妻と

群馬で小さな電気屋を営む斎木雄大(リリー・フランキー)、ゆかり(真木よう子)夫妻の元に

6歳になる互いの息子が、出産時に病院で取り違えられていたと連絡が入る。

突然のことに戸惑いながらも交流を始める2家族だが、

育てて来た子を手放し、交換することが果たして正解なのか、結論を出せずにいた…。

オノマチと真木の顔合わせって、

先日のドラマ「最高の離婚」も同じだったし、映画版の「外事警察」でも共演していた。

いま、演技のできる30歳前後の女優となると、この2人になるのかもね。

福山の演技は初めのほうは湯川学とほぼ同じだが、後半につれてよくなる。

内面葛藤の演技になるとやはりもう一歩な感は否めないが、

それを凌駕する「画力(えぢから)」があり、主演がスクリーン映えするって本当に素晴らしい。と思わされた。

もともと彼はミュージシャンなのであって、本人が俳優への本格的なシフトを望まない限り、

演技についてはそれで許される。と私は思う。

是枝監督自身も現在、子育て中であり、自分が興味あるテーマを選んで

福山とのコラボレーションで作り上げたというべき一本である。

 

「そして父になる」

9月28日(土) 公開

2013年日本ギャガ2時間1分

是枝裕和監督・脚本・編集

福山雅治、小野真千子、真木よう子、リリー・フランキーほか 出演

矢代真紀

WORD WORK  矢代真紀(やしろまき)

1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。