「ぼくたちのムッシュ・ラザール」
2012.10.18
代用教員として赴任したラザール先生と生徒たちの
心の交流を描くカナダ映画「ぼくたちのムッシュ・ラザール」。
舞台はモントリオールの小学校。冬の朝、クラスの牛乳当番だったシモンは、一足早く校内に入り、
クラス全員分の牛乳が入ったカゴを持って教室のドアに手をかけるが、中から鍵がかかっていて開かない。
不思議に思って中を覗き込むと、教室の奥に、首を吊った担任のマルティーヌ先生の姿があった。
もうひとり、異変を察知した女子児童のアリスもまた、近づいて教室を覗きこんでしまう。
それから1週間後、代理教師の手配に追われる学校に、
アルジェリアからの移民というバシール・ラザール(フェラグ)が現れ、
母国での教師経験を生かして「子どもたちの助けになりたい」と直談判する。
公式サイト=http://www.lazhar-movie.com/
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札幌シアターキノで9月29日(土)より10月26日(金)まで公開中
公式サイト=http://www.lazhar-movie.com/
”担任教師の自殺”というショッキングな事件に揺れる学校、
小さいなりに「死」という現実を受け入れようとする子どもたち。
難しいテーマに、まっすぐに向き合った感動作だ。
とくに、物語の軸となるシモンとアリスを演じた男女2名の子役の演技力は、大人以上!
じつに複雑な表情を浮かべ、不安定な精神状態を表現して見せる。
そして子どもたちだけでなく、ラザールもまた心に傷を持つ身であることが、次第に分かってくる。
まだ年端もゆかない子どもたちには、事件によって自分がどんな影響を受け、
何を消化できずにいるかということすら、わからない。
それを温かく見守る大人が「信頼」という絆を彼らと結ぶことによって、
心が開かれ、初めて癒やされる傷もあるのだ。
その瞬間を見事に描き出した、秀作だと思う。
「ぼくたちのムッシュ・ラザール」
9月29日(土) 公開
2012カナダザジ フィルムズ、アルバトロス・フィルム配給1時間35分
フィリップ・ファラルドー監督・脚本
フェラグ、ソフィー・ネリッサ、エミリアン・ネロンほか 出演
WORD WORK 矢代真紀(やしろまき)
1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。