「るろうに剣心」
2012.08.28
佐藤健の人気がじわじわ上がってくる様子を
デビュー直後に「くる!」と言い切ってから、もう長いこと、孫を見守るような?気持ちで追ってきた。
やっと、彼のここまでの代表作というべき作品が完成。映画「るろうに剣心」である。
ⓒ和月伸宏/集英社 ⓒ2012「るろうに剣心」製作委員会 ※画像転載禁止
ワーナー・ブラザース映画配給
札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌で8月25日(土)公開
公式サイト=http://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin/index.html
幕末。倒幕派最強の暗殺者として恐れられた男がいた。人呼んで「人斬り抜刀斎」。
京都の山中で、新撰組の斎藤一(江口洋介)に相対したのを最後に、抜刀斎は姿を消す。
それから10年、彼は緋村剣心(佐藤)と名を変えて国内を流浪していた。
訪れた東京で剣心が目にした「人斬り抜刀斎」の人相書きは、自分と似ても似つかぬもの。
驚く剣心に、木刀を突きつけてきた少女がいた。
父から受け継いだ道場を守る、神谷薫(武井咲)だった…。
こういっちゃなんだが、悪い意味ではなく、ちょっとだけずるい作品である。
監督・脚本の大友啓史は、元NHK出身。
ドラマ「ハゲタカ」「白洲次郎」「龍馬伝」の演出を手掛け、昨年独立した。
局員時代に監督した映画版「ハゲタカ」に続いてメガホンをとった2作目が、本作である。
で、「龍馬伝」で気心知れた面々を、ごっそりキャスティング。
主演の佐藤はもちろん、香川照之、蒼井優、青木祟高と、主だったキャストはすべて「龍馬伝」組なのだ。
人気コミックの実写化というリスクはあったにせよ、独立第一作目の条件としては、心強い限りだろう。
時代劇初挑戦の「龍馬伝」で「人斬り以蔵」を好演した佐藤をそのまま「人斬り抜刀斎」役に、
後に実業家として成功を収めた「岩崎弥太郎」を演じた香川に
金と快楽を追求する実業家、武田観柳役をあてている。
手堅いというべきか。そこが、ちょっとだけずるいなと思う理由だ。
佐藤健の一番のアドバンテージは、顔が美しく「華」があること。
23歳という年齢もあって、これからどんどん変わっていくだろうから
今が一番きれいな時なのかも知れない。
少々痩せすぎな気もするが、小柄な体格でキレのよいアクションを見せ、
大柄な吉川晃司や江口洋介を敵に回してもヒケを取らない。
これもまた、小柄な役者同士~たとえば妻夫木聡や岡田准一>~を組ませたのでは、
佐藤の俊敏さが目立たなくなるわけで、やはりここも、確信犯的キャスティングなのだと思う。
以前にも書いたが、現在の佐藤健の魅力は「一生懸命」なところである。演技力うんぬんはさておき、
持てる力の全部を使って目の前の現場にぶつかっていることが、見ている側に伝わってくる。
この剣心役にも、自分のキャリアとパワーを注ぎきったはずだ。
それがわかるので、私個人としては、安心した(笑)
同い年の岡田将生と並び、この世代の「主演候補」として、頭ひとつ抜けだした感がある
「るろうに剣心」
8月25日(土) 公開
2012日本ワーナーブラザース映画2時間14分
大友啓史監督・脚本
佐藤健、江口洋介、青木祟高、蒼井優、武井咲、吉川晃司、香川照之、綾野剛ほか 出演
WORD WORK 矢代真紀(やしろまき)
1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。