映画のミカタ

「るろうに剣心」

佐藤健の人気がじわじわ上がってくる様子を

デビュー直後に「くる!」と言い切ってから、もう長いこと、孫を見守るような?気持ちで追ってきた。

 

やっと、彼のここまでの代表作というべき作品が完成。映画「るろうに剣心」である。

ⓒ和月伸宏/集英社 ⓒ2012「るろうに剣心」製作委員会 ※画像転載禁止

ワーナー・ブラザース映画配給

札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌で8月25日(土)公開

公式サイト=http://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin/index.html

 

幕末。倒幕派最強の暗殺者として恐れられた男がいた。人呼んで「人斬り抜刀斎」。

京都の山中で、新撰組の斎藤一(江口洋介)に相対したのを最後に、抜刀斎は姿を消す。

それから10年、彼は緋村剣心(佐藤)と名を変えて国内を流浪していた。

 

訪れた東京で剣心が目にした「人斬り抜刀斎」の人相書きは、自分と似ても似つかぬもの。

驚く剣心に、木刀を突きつけてきた少女がいた。

父から受け継いだ道場を守る、神谷薫(武井咲)だった…。

こういっちゃなんだが、悪い意味ではなく、ちょっとだけずるい作品である。

監督・脚本の大友啓史は、元NHK出身。

ドラマ「ハゲタカ」「白洲次郎」「龍馬伝」の演出を手掛け、昨年独立した。

局員時代に監督した映画版「ハゲタカ」に続いてメガホンをとった2作目が、本作である。

 

で、「龍馬伝」で気心知れた面々を、ごっそりキャスティング。

主演の佐藤はもちろん、香川照之、蒼井優、青木祟高と、主だったキャストはすべて「龍馬伝」組なのだ。

人気コミックの実写化というリスクはあったにせよ、独立第一作目の条件としては、心強い限りだろう。

 

時代劇初挑戦の「龍馬伝」で「人斬り以蔵」を好演した佐藤をそのまま「人斬り抜刀斎」役に、

後に実業家として成功を収めた「岩崎弥太郎」を演じた香川に

金と快楽を追求する実業家、武田観柳役をあてている。

手堅いというべきか。そこが、ちょっとだけずるいなと思う理由だ。

 

佐藤健の一番のアドバンテージは、顔が美しく「華」があること。

23歳という年齢もあって、これからどんどん変わっていくだろうから

今が一番きれいな時なのかも知れない。

 

少々痩せすぎな気もするが、小柄な体格でキレのよいアクションを見せ、

大柄な吉川晃司や江口洋介を敵に回してもヒケを取らない。

これもまた、小柄な役者同士~たとえば妻夫木聡や岡田准一>~を組ませたのでは、

佐藤の俊敏さが目立たなくなるわけで、やはりここも、確信犯的キャスティングなのだと思う。

 

以前にも書いたが、現在の佐藤健の魅力は「一生懸命」なところである。演技力うんぬんはさておき、

持てる力の全部を使って目の前の現場にぶつかっていることが、見ている側に伝わってくる。

この剣心役にも、自分のキャリアとパワーを注ぎきったはずだ。

それがわかるので、私個人としては、安心した(笑)

 

同い年の岡田将生と並び、この世代の「主演候補」として、頭ひとつ抜けだした感がある

「るろうに剣心」

8月25日(土) 公開

2012日本ワーナーブラザース映画2時間14分

大友啓史監督・脚本

佐藤健、江口洋介、青木祟高、蒼井優、武井咲、吉川晃司、香川照之、綾野剛ほか 出演

矢代真紀

WORD WORK  矢代真紀(やしろまき)

1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。