映画のミカタ

「ベルリンファイル」公開中

公開当時、韓国映画の勢いを肌で感じた作品といえば

ハン・ソッキュ×ソン・ガンホ×チェ・ミンシクの共演によるスパイアクション「シュリ」(2000年)。

こんなの作れるなんてすごい、日本映画よりレベル高いじゃん!と、

観た後、興奮気味だったものである。

 

以来、韓流ブームとともに日本で公開される韓国作品は増え続けたが、

私の中では何を観ても「シュリ」の衝撃を超えなかったんだよね。

だがしかし、この「ベルリンファイル」には、それ以来と言ってもいい見ごたえを感じた。
 ⓒ2013 CJ E&M CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED

※画像転載禁止 CJ Entertainment Japan配給 PG12指定

札幌シネマフロンティアほかで公開中     公式サイト=http://berlinfile.jp/

 

ドイツの首都ベルリン。高級ホテルの一室で、武器取引の密談が交わされていた。

その様子を監視カメラで映し出すモニターを見つめるのは

韓国情報院の敏腕エージェント、ジンス(ハン・ソッキュ)。

 

モニターには、CIAやMI6のリストにすら記録がなく

”ゴースト”とされている北朝鮮の秘密工作員ジョンソン(ハ・ジョンウ)の姿があった。

ジンスの目的は、武器取引の資金の流れを追い、

かつてキム・ジョンイルが死去直前にヨーロッパに移した40憶ドルの秘密口座にありかを暴くこと。

しかし取引現場で銃撃戦が勃発し、ジンスはジョンソンを取り逃がしてしまう。

ストーリーの軸は、韓国と北朝鮮のスパイ合戦。

誰が誰を裏切っているのか、途中でわからなくなる展開と

手に汗握るアクションで見せる、エンタテインメント作品だ。

主演のジョンウは、ルックスが大鶴義丹に似ていて

彼のブレイク作品である「チェイサー」を私が見逃してることもあり、

個人的に途中からもう義丹にしか見えなくなって、ちょっと参った(笑)

ジョンソンの妻で、ベルリン北朝鮮大使館の通訳官を務めるジョンヒ役を

「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョンが演じている(相変わらず美しい)。

 

そして、「シュリ」から14年経っても、ソッキュの存在感は健在。

四角い顔で決してハンサムじゃないし、どこにでもいそうなのに

なんでこんなにスクリーン映えするのか、と出演作を観るたびに思う。

最初出てきたときはそうでもないんだけど、途中から、なぜか格好よく見えてくるから不思議!

だからこそ、14年経ってもこうしてキャスティングされるんだろうなと。

 

南北朝鮮のスパイ問題以外にもイスラエル情報局とか、CIA局員とか、ロシア人ブローカーとか

複雑な要素が多々からみあっている割には、それぞれのキャラが立っていて、比較的わかりやすく作られている。

で、観た後やっぱり思うのだ。

韓国映画で、本作のようなハリウッド大作的スケールの作品が撮れるんだから

邦画でも、やってできないことはないんじゃないかと。

テレビドラマの延長ではなく、CGに頼るのでもなく、

「日本映画の歴史を変えた」と言われるような平成作品に、そろそろ出合いたい。

「ベルリンファイル」

7月13日 公開

2013年韓国CJ Entertainment Japan2時間

リュ・スンワン監督・脚本

ハ・ジョンウ、ハン・ソッキュ、チョン・ジヒョン、リュ・スンボムほか 出演

矢代真紀

WORD WORK  矢代真紀(やしろまき)

1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。