「ボーン・レガシー」公開中
2012.10.16
アップが遅くなって申し訳ないけれど、
マット・デイモン主演の「ボーン・アイデンティティー」3部作のファンなら
是が非でも見逃せないのが「ボーン・レガシー」だ。
アラスカのCIA訓練基地。
極寒の雪山で、トレーニングに没頭する男がいた。
強靭な肉体を持つ、アーロン・クロス(ジェレミー・レナー)。
彼はCIAによる人格・肉体改造プログラム[アウトカム計画]によって造られた
”最高傑作”で、プログラム参加中は、定期的な血液採取と薬の服用が義務づけられていた。
しかし相次ぐ予定の変更に、計画遂行に何らかの異変が起きていることに勘づく。
一方、彼の体調を管理している会社に勤務するマルタ博士(レイチェル・ワイズ)は、
研究中に突然、同僚の男が銃を乱射し始め、九死に一生を得る。
実は乱射事件の理由には秘密があり、内情を知りすぎたマルタは命を追われることに。
ⓒ2012 Universal Studios. All Rights Reserved. ※画像転載禁止
東宝東和配給 札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌、
ディノスシネマズ札幌劇場ほかで9月28日より公開中
公式サイト=http://bourne-legacy.jp/
前3部作の主人公、ジェイソン・ボーン(デイモン)は、
CIAの極秘プログラム[トレッドストーン計画]によって
人造的につくり上げられた暗殺者のスペシャリストだった。
その計画と並行して進められていたのが、本作で描かれる[アウトカム計画]である。
どちらの計画も国家の巨大な陰謀の一角にすぎず、
機密漏洩によって自らの国家が危機に陥ることを恐れるCIA長官のクレイマー(スコット・グレン)は、
国家調査研究所のリック・バイヤー(エドワード・ノートン)に事態の収拾を命じる。
証拠隠滅のためには、全プログラムの抹消が不可欠だった…。
横文字の計画名や企業名がわんさか出てきて難しそう、と思うかもしれないが、そんなことはない。
むしろこれだけ入り組んだ内容をよくぞここまで、というくらい分かりやすくまとめている。
というのも、前3部作との大きな違いは、
シリーズの全脚本を担当しているトニー・ギルロイが、自ら監督を務めていること。
ギルロイは過去にも監督経験があり、その手腕にも定評があるのだ。
よってムダが省かれ、よりストーリー性を大切にしたアクション大作に仕上がった。
まあ、前シリーズも才能ある監督たちが撮ったからこそ、ここまでヒットしたんだけどね。
で、新しい主役のアーロンを演じるレナーについては、「誰なん?」と思う人もいるかも知れないが、
過去にアカデミー賞に2度ノミネートされている実力派。
2010年のアカデミー賞で作品賞、監督賞を受賞した「ハート・ロッカー」で
イラクに赴いた危険物処理班の兵士役で主演し、高い評価を受けた。
華があるタイプのルックスではないが、体のキレは申し分ない。
恐らくは、アクション俳優のイメージが強くなることを好まないデイモンが、
続編には参加しないと決めたからこそ、回ってきた大役なのでは、と思う。
続編が出るたびに精度が落ちていくシリーズが多い中、
本作がスケール感で見劣りしないのは、ギルロイが支柱となり、
実力派キャストとスタッフを集めて、作品を牽引しているからにほかならない。
ボーン・レガシー
9月28日 公開
2012年アメリカ東宝東和2時間15分
トニー・ギルロイ監督・脚本
ジェレミー・レナー、レイチェル・ワイズ、エドワード・ノートン、スコット・グレンほか 出演
WORD WORK 矢代真紀(やしろまき)
1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。