映画のミカタ

「ボーン・レガシー」公開中

アップが遅くなって申し訳ないけれど、

マット・デイモン主演の「ボーン・アイデンティティー」3部作のファンなら

是が非でも見逃せないのが「ボーン・レガシー」だ。

 

アラスカのCIA訓練基地。

極寒の雪山で、トレーニングに没頭する男がいた。

強靭な肉体を持つ、アーロン・クロス(ジェレミー・レナー)。

彼はCIAによる人格・肉体改造プログラム[アウトカム計画]によって造られた

”最高傑作”で、プログラム参加中は、定期的な血液採取と薬の服用が義務づけられていた。

しかし相次ぐ予定の変更に、計画遂行に何らかの異変が起きていることに勘づく。

 

一方、彼の体調を管理している会社に勤務するマルタ博士(レイチェル・ワイズ)は、

研究中に突然、同僚の男が銃を乱射し始め、九死に一生を得る。

実は乱射事件の理由には秘密があり、内情を知りすぎたマルタは命を追われることに。

ⓒ2012 Universal Studios. All Rights Reserved. ※画像転載禁止

東宝東和配給 札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌、

ディノスシネマズ札幌劇場ほかで9月28日より公開中

公式サイト=http://bourne-legacy.jp/

 

前3部作の主人公、ジェイソン・ボーン(デイモン)は、

CIAの極秘プログラム[トレッドストーン計画]によって

人造的につくり上げられた暗殺者のスペシャリストだった。

その計画と並行して進められていたのが、本作で描かれる[アウトカム計画]である。

 

どちらの計画も国家の巨大な陰謀の一角にすぎず、

機密漏洩によって自らの国家が危機に陥ることを恐れるCIA長官のクレイマー(スコット・グレン)は、

国家調査研究所のリック・バイヤー(エドワード・ノートン)に事態の収拾を命じる。

証拠隠滅のためには、全プログラムの抹消が不可欠だった…。

 

横文字の計画名や企業名がわんさか出てきて難しそう、と思うかもしれないが、そんなことはない。

むしろこれだけ入り組んだ内容をよくぞここまで、というくらい分かりやすくまとめている。

 

というのも、前3部作との大きな違いは、

シリーズの全脚本を担当しているトニー・ギルロイが、自ら監督を務めていること。

ギルロイは過去にも監督経験があり、その手腕にも定評があるのだ。

よってムダが省かれ、よりストーリー性を大切にしたアクション大作に仕上がった。

 

まあ、前シリーズも才能ある監督たちが撮ったからこそ、ここまでヒットしたんだけどね。

 

で、新しい主役のアーロンを演じるレナーについては、「誰なん?」と思う人もいるかも知れないが、

過去にアカデミー賞に2度ノミネートされている実力派。

2010年のアカデミー賞で作品賞、監督賞を受賞した「ハート・ロッカー」で

イラクに赴いた危険物処理班の兵士役で主演し、高い評価を受けた。

華があるタイプのルックスではないが、体のキレは申し分ない。

 

恐らくは、アクション俳優のイメージが強くなることを好まないデイモンが、

続編には参加しないと決めたからこそ、回ってきた大役なのでは、と思う。

 

続編が出るたびに精度が落ちていくシリーズが多い中、

本作がスケール感で見劣りしないのは、ギルロイが支柱となり、

実力派キャストとスタッフを集めて、作品を牽引しているからにほかならない。

ボーン・レガシー

9月28日 公開

2012年アメリカ東宝東和2時間15分

トニー・ギルロイ監督・脚本

ジェレミー・レナー、レイチェル・ワイズ、エドワード・ノートン、スコット・グレンほか 出演

矢代真紀

WORD WORK  矢代真紀(やしろまき)

1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。