映画のミカタ

「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」  公開中

奇想天外な話である。

もちろん、実話に基づいていたりは、、、しない。

公開中の映画「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」。

ⓒ2012 Twentieth Century Fox ※画像転載禁止 20世紀フォックス映画配給

札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌、ディノスシネマズ札幌ほかで公開中

公式サイト=http://www.foxmovies.jp/lifeofpi/

 

ひとつ屋根の下ならぬ一艘の船の中、

大海原を227日間もベンガルトラのリチャード・パーカーと

ともに過ごすはめになった少年、パイ(スラージ・シャルマ)の物語。

そもそもなぜこんな状況に陥ったかは、ぜひ観て確かめてもらいたい。

私は基本、大風呂敷広げまくりの映画は苦手である。

たとえば宇宙人が地球を侵略に来て、いろーんなことがあったけど、

最後まで観てもなぜ彼らが侵略に来たのかがわからない、とか。

だから、SF作品は極端に鑑賞本数が少ない。

 

この映画はSFではないが、設定だけ聞くと、かなり大風呂敷な匂いがする。

でも観たいと思ったのは監督がアン・リーだと知ったからである。

アン・リーは、台湾出身の監督でもっとも成功を収めている人である。

何がすごいって、撮っている作品ジャンルの広さだ。

 

初期に高評価を得たのが、イギリス人ジェーン・オースティン原作の「いつか晴れた日に」。

そりゃもうガッチガチの文芸ドラマだった。

その数年後にはアクション映画「グリーン・ディスティニー」や

マーベル・コミック原作の「ハルク」を手掛け、

2005年に絶賛された「ブロークバック・マウンテン」は男同士の恋愛モノだった。

トニー・レオン主演の「ラスト・コーション」では激しい性描写が話題となった。

似た作品を二度撮らない。

 

でもって今回は、壮大な規模の冒険物語である。

当然ながらCG合成が多用され、一歩間違うとチープな仕上がりになりかねない題材を

これだけの映像に仕上げる手腕は、やはりタダモノではない。

だって、映像が美しいもの!面白いもの!

 

いやー、アン・リーって何でもできるんですね。

映画ファンの多くが、この作品を観てそう思ったに違いない。

 

だってね。主演のパイ役の少年、ド素人だからね!

インドでの3000人のオーディションから抜擢たれたんだけど。

ほとんど彼とトラしか出てこないのに、だよ。

こういう”正統派”な冒険作を撮らせると、

監督の演出力のレベルが如実にわかるものなのだなあと、本当に感心した。

「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」

1月25日 公開

2013年アメリカ20世紀フォックス映画2時間7分

アン・リー監督・製作

スラージ・シャルマ、イルファン・カーン、レイフ・スポール、ジェラール・ドパルデューほか 出演

矢代真紀

WORD WORK  矢代真紀(やしろまき)

1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。