「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」 公開中
2013.02.21
奇想天外な話である。
もちろん、実話に基づいていたりは、、、しない。
公開中の映画「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」。
ⓒ2012 Twentieth Century Fox ※画像転載禁止 20世紀フォックス映画配給
札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌、ディノスシネマズ札幌ほかで公開中
公式サイト=http://www.foxmovies.jp/lifeofpi/
ひとつ屋根の下ならぬ一艘の船の中、
大海原を227日間もベンガルトラのリチャード・パーカーと
ともに過ごすはめになった少年、パイ(スラージ・シャルマ)の物語。
そもそもなぜこんな状況に陥ったかは、ぜひ観て確かめてもらいたい。
私は基本、大風呂敷広げまくりの映画は苦手である。
たとえば宇宙人が地球を侵略に来て、いろーんなことがあったけど、
最後まで観てもなぜ彼らが侵略に来たのかがわからない、とか。
だから、SF作品は極端に鑑賞本数が少ない。
この映画はSFではないが、設定だけ聞くと、かなり大風呂敷な匂いがする。
でも観たいと思ったのは監督がアン・リーだと知ったからである。
アン・リーは、台湾出身の監督でもっとも成功を収めている人である。
何がすごいって、撮っている作品ジャンルの広さだ。
初期に高評価を得たのが、イギリス人ジェーン・オースティン原作の「いつか晴れた日に」。
そりゃもうガッチガチの文芸ドラマだった。
その数年後にはアクション映画「グリーン・ディスティニー」や
マーベル・コミック原作の「ハルク」を手掛け、
2005年に絶賛された「ブロークバック・マウンテン」は男同士の恋愛モノだった。
トニー・レオン主演の「ラスト・コーション」では激しい性描写が話題となった。
似た作品を二度撮らない。
でもって今回は、壮大な規模の冒険物語である。
当然ながらCG合成が多用され、一歩間違うとチープな仕上がりになりかねない題材を
これだけの映像に仕上げる手腕は、やはりタダモノではない。
だって、映像が美しいもの!面白いもの!
いやー、アン・リーって何でもできるんですね。
映画ファンの多くが、この作品を観てそう思ったに違いない。
だってね。主演のパイ役の少年、ド素人だからね!
インドでの3000人のオーディションから抜擢たれたんだけど。
ほとんど彼とトラしか出てこないのに、だよ。
こういう”正統派”な冒険作を撮らせると、
監督の演出力のレベルが如実にわかるものなのだなあと、本当に感心した。
「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」
1月25日 公開
2013年アメリカ20世紀フォックス映画2時間7分
アン・リー監督・製作
スラージ・シャルマ、イルファン・カーン、レイフ・スポール、ジェラール・ドパルデューほか 出演
WORD WORK 矢代真紀(やしろまき)
1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。