映画のミカタ

「リンカーン」公開中

※アップが遅くてすみません。札幌での公開は、終わってしまいましたね。

でもいずれどこかでリバイバル上映すると思います。

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たぶん、私はダニエル・デイ=ルイスという役者が好きなのだろう。と思う。

 

彼が最初にオスカーを受賞した「マイ・レフトフット」(1990年)を観た時は

「すごすぎる!」とショックを受け、

二度目に受賞した「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(2008年)を観て 作品紹介記事に

「彼は役者になったのではなく、役者として生まれついたのだ」と書いた。

 

そして史上初・三度目の受賞となった本作を観ても、その思いはゆるがない。
映画というより、デイ=ルイスに、お金を払う価値がある。

それだけの演技だ。それだけの役者だ。

同じ役者を生業にする人たちには、刮目して観てほしい。 これを本物と呼ぶのだ。

ⓒ2012 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION and DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC

※画像転載禁止 20世紀フォックス映画配給

シネプレックス旭川ほかで公開中

公式サイト=http://www.foxmovies.jp/lincoln-movie/

1865年、米国第16代大統領リンカーン(デイ=ルイス)は苦境にあった。

奴隷解放の賛否をめぐって起きた南北戦争は4年目に突入、

すでに多くの若者の命が犠牲になっていたのだ。

 

自らの夢である〈奴隷解放〉を実現するためには憲法改正が必要だが

味方である共和党の党員の中にも、戦争をこれ以上長引かせないために

奴隷制を認めて南軍との和平を勧める声が次第に大きくなる。

〈人間の尊厳〉と〈戦争の終結〉の狭間に立たされたリンカーンは

米国憲法修正第13条の可決に不足している20票を集めるため、

あらゆる策を弄するようにとの指示を出すが…。

スティーブン・スピルバーグ監督×ヤヌス・カミンスキーの撮影にしては、非常に抑制された映像だ。

同じコンビによる、戦争を題材にした名作とされる

「シンドラーのリスト」や「プライベート・ライアン」と比較しても

彼らが得意とするところの、ドラマティックな絵づくりは少ない。

リンカーンの人物像をストレートに見せることに腐心している。

 

それだけ、リンカーンがリンカーン然として現場にいた、ということだろう。

知らない人のために一応書いておくと、デイ=ルイスはイギリス人である。

なのに、この作品を観た後では彼以外のキャスティングは全く考えられない。

その意味では、昨年、アメリカ人なのにサッチャーを演じたメリル・ストリープをしのぐ出来かも知れない。
そして音楽も素晴らしい!! と思って観たあとプレスシートを読むと

やはり、ジョン・ウィリアムス御大であった。81歳。だよね、やっぱりね。すごいなあ。

 

また、本作のプレスシートに映っている現場でのスピルバーグの写真は、

トレードマークのキャップをかぶり、なぜかスーツ姿でネクタイを締めている。普段はこんな格好ではない。

実は、毎日「リンカーンに」会いに行っていたため、大統領に敬意を表して、その服装だったのだそうだ。

年齢は、スピルバーグのほうがデイ=ルイスより10歳上なのに!
これまではWトム(ハンクスとクルーズ)を主演に撮ることが多かったスピルバーグだが、

この一本で、デイ=ルイスに惚れ込んだのではないか。そう思わせるような”人物寄り”の作品だった。

 

「リンカーン」

4月19日 公開

2013年米国20世紀フォックス映画2時間30分

スティーブン・スピルバーグ監督

ダニエル・デイ=ルイス、サリー・フィールド、ジェームズ・スペイダー、トミー・リー・ジョーンズほか 出演

矢代真紀

WORD WORK  矢代真紀(やしろまき)

1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。