「幸せへのキセキ」
2012.07.02
マット・デイモン主演の人間ドラマ「幸せへのキセキ」。
ⓒ2011 Twentieth Century Fox ※画像転載禁止
20世紀フォックス映画配給
6月8日(金)より札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌ほかで公開中。
公式サイト=http://www.foxmovies.jp/sk/
ベンジャミン・ミー(デイモン)は、ロサンゼルスの新聞社に勤めるコラムニスト。
半年前に妻を亡くし、子育てに追われている。
14歳の息子ディラン(コリン・フォード)は思春期で、学校でも頻繁に問題を起こし、父親にも反抗的だ。
7歳の妹、ロージー(マギー・エリザベス・ジョーンズ)は天真爛漫な性格だが、
繰り返される父と兄の衝突に、笑顔も曇りがち。
そんなある日、上司と衝突したベンジャミンは、衝動的に会社を辞めてしまう。
同じ時期にディランが退学処分になった。
ベンジャミンは家族の絆を取り戻すため、妻との思い出が詰まった街を離れる決意をする。
郊外で家を探し、やっと理想的な邸宅を見つけるが、
なんとその物件には、閉園状態に追い込まれた「動物園」が付いていた…。
実話を基にした、家族の物語。
家族の再生を目指しながら、同時に動物園のオーナーとして再建に取り組む主人公の姿に、
見ている側は知らず知らず、彼を応援している。
妻を失った家族の再生という主題は、先日公開された「ファミリー・ツリー」と重なるが、
話も設定もまるで違う。
「家を買ったらもれなく動物園が付いてきた」なんて
普通はあり得ない設定なのだが、デイモンの演技には、なぜか親近感がわく。
いい意味で、「人間味」があるのだ。
映画の中でデイモンがどんな役を演じても、なぜか彼に感情移入してしまうのは、
たぶん苦悩とか葛藤とか、人間ならだれもが持っている部分の感情表現に長けているからだと思う。
作品中に、俳優ではなく、ひとりの人間としての彼を見るからだ。
飛びぬけてハンサムではないのに、次々と主演作のオファーがあるのも、
きっとそこに理由がある気がする。
また、トラをはじめとする動物たちと、
飼育係のケリーを演じるスカーレット・ヨハンソンも、しっかりと作品を支えている。
ひとつ惜しいのは、邦題が今ひとつなこと。こんな印象に残らない字面にするくらいなら、
実話をベースにした物語なのだし、タイトルに「動物園」を入れるべきだったのではと思う。
邦画タイトルは、日本での観客動員数を確実に左右する。
作品への愛が感じられるものを、切に望む。
「幸せへのキセキ」
6月8日(金) 公開
2012年アメリカ20世紀フォックス映画124分
キャメロン・クロウ 監督
マット・デイモン、スカーレット・ヨハンソン、トーマス・ヘイデン・チャーチ 出演
WORD WORK 矢代真紀(やしろまき)
1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。