「鍵泥棒のメソッド」公開中
2012.10.02
これまた公開から日が経ってしまって、ごめんなさい。
2012年ここまで観た邦画の中で私個人の一番好きな作品です、「鍵泥棒のメソッド」。
試写を観ながら、ゲラッゲラ笑いました。
今やってる映画で何が面白い? って聞かれると
案外困ることが多くて
好みによって勧める作品が変わってくるんだけど
これは比較的、万人に勧められる作品だなと。
ⓒ2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会 ※画像転載禁止
クロックワークス配給
札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌ほかで9月15日(土)より公開中
公式サイト=http://kagidoro.com/
銭湯で頭を強打し、記憶を失った男(香川照之)。
そのとき居合わせた売れない役者・桜井(堺雅人)は、自殺に失敗してやぶれかぶれでもあり、
出来心から銭湯のロッカーの鍵をすり替え、彼になりすます。
しかしその男はなんと、伝説の殺し屋コンドウだった。やがて危険な依頼が舞い込み、動揺する桜井。
一方、記憶を失くして自分を桜井だと思いこんでいるコンドウは、
役者としての成功を目指して、真面目に努力し始める。
そんな彼の姿を、婚活中の女性編集長・香苗(広末涼子)が見染めて…。
演技巧者ふたりの顔合わせということで「演技合戦」なのかと思いきや、
カガテルのやりたい放題、独壇場である。
堺は主人公ながら”受け”の演技に徹し、
売りの”キモさ”を封印。ぼうっとサエない、でも憎めない男を演じる。
封印と言えば、内田けんじ監督は本作で広末に「笑顔」を禁じたそうである。これが大正解!
20代後半になってからの広末が、昔に比べて女ウケしなくなったのは、
いつもいつも必ず出してくる「ハニカミ笑顔」が、カマトトっぽくて鼻につくからなのである。
下唇を噛み気味で上目遣いの、たぶん本人にとっての”キメ顔”だと思うのだが、
30歳を過ぎ、2児の母となった今では、さすがにどうなの。と、私は思っていた。
内田監督はたぶん、そのウィークポイントを察知して、たぶん、わざと笑わせずに使ったのである。
練り上げられた脚本もさることながら、そのあたりの適材適所な使い方が、非常に効いている。
ひとつだけ気になった点があるとすれば、
月刊誌の女性編集長が、いくら事情があってのこととはいえ、
年末進行のピークにあたる12/15に、自分の結婚式のスケジュールは組まないのでは? ということ。
これは同業者でないと分からないと思うが、1年の中でも
わざわざ「12月中旬」に挙式、という選択だけは、ナイと思うのである。
ストーリーの展開がネタバレ含みなので、宣伝シーンを見ただけではどんな映画か分かりづらいと思うが、
サスペンスの要素もあり、ラブコメの要素もありの、きっちり仕上がったエンタテインメント作品なのだ。
そして、記憶を失った後で、桜井の洋服を徐々に”着こなして”いくカガテルの演技を観るだけで、
もう十分な価値があると私は思う。あー、面白かった。
「鍵泥棒のメソッド」
9月15日(土) 公開
2012年日本クロックワークス2時間8分
内田けんじ監督・脚本
堺雅人、香川照之、広末涼子、荒川良々ほか 出演
WORD WORK 矢代真紀(やしろまき)
1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。