SPF豚1頭買いでイチから手作り!
「まずはやってみよう」という行動派です。
2012.10.23
HARU cafe
オーナー
岩瀬千春さん
60歳でカフェを始められた岩瀬千春さん。「SPF豚を1頭買い」「業務用のミンチする機械を持っている」---。いかにも“お母さん”然としたやさしい雰囲気を漂わせる岩瀬さんから、そんな言葉が出てくるのがとても面白かった取材時。60代で新しいことを始めるなんて素敵なことだと思いませんか?彼女のバイタリティ豊かなお人柄をお伝えします!
まさか60代でカフェを始めるなんて
コンセプトは「主婦が利用できる癒し空間」です
――カフェのオープンは昨年(2011年)6月。岩瀬さんが、ちょうど60歳の年でした。多くの方が定年されるこのタイミングで新しいことを、しかも趣味ではなくシゴトを始められたということに感動しました。
岩瀬さん(以下、敬称略):私もまさか60歳でシゴトを始めるとは自分に驚いています(笑)でも振り返ってみると昔から、なんとなくだけど、喫茶店をやりたいなって思いはありましたね。
――実現させちゃうところがすごいです。それまでは専業主婦だったんですか。
岩瀬:いえ、主人が自営業なので、その経理を担当していました。元美容師でデスクワークがとても苦手だったんですけど、勉強して、専門の資格も取得したんですよ。
――お母さん、奥さん、 ビジネスウーマンの3役をこなしてこられたんですね。尊敬します。
岩瀬:まずはやってみよう、という行動派で、物事をあまり深く考えないのがよかったのかも知れません(笑)。カフェも、当初は賃貸しようと思っていた自宅1階のこのスペースがあったので、1年やってダメならやめればいい、くらいの気持ちで始めたんです。
――今や予約の入るカフェになりましたね。「ママにやさしい」「安心でおいしい食事がリーズナブルに食べられる」という評判を耳にします。
岩瀬:コンセプトは「主婦が利用できる癒し空間」。お子さんがいらっしゃると、なかなかゆっくりできるお店がないので、うちがそういう場所になればと思いました。ちょうど子育てしている娘からのアドバイスで、ママと子ども用の小上がりを2つ作っておもちゃを置いたのですが、その席が人気となり予約が入るようになりました。あと価格は、絶対に高くしたくなかったので、リーズナブルと思ってもらえるのなら、とても嬉しいですね。
家族のためにSPF豚を1頭買い
自家製ベーコンも我が家のレパートリーでした
――メニューはドリンクと自家製スイーツのほか、SPF豚とベーコンの料理に絞って構成されています。個性的ですね。
岩瀬:最近はご飯屋さんみたいになっています(笑)SPF豚は生産者さんから、1頭丸ごと仕入れているんですよ。
――え!? 1頭買いですか? カフェでそういうことしているのはめずらしいような…。
岩瀬:実はカフェを始める前からなんです。我が家の豚肉料理は、すべてこのSPFポークを使っていまして、ハンバーグなどのひき肉もこの固まり肉から作っているんです。わざわざミンチにする業務用の機械も買ったんですよ(笑)なにごとも「イチから手作り」が好きなので。
――なるほど、ここのメンチカツが臭みがなくてやわらかくておいしいのは、まさに「イチからの手作り」の成果なんですね。ベーコンも自家製とのことですが、それもこのSPF豚で?
岩瀬:ベーコン用の肉はいろいろ試した結果、デンマーク産がいいという結論に至り、それを仕入れて使っています。育成環境のよいデンマークで育てられる豚肉は、肉厚で白身と赤身が均等できれいなんですよ。それを燻製機でじっくり燻します。
――もしかしてそれも、カフェを始める前から?
岩瀬:はい、そうです。カフェのメニューは、家で食べていたものがベースなんです。ちなみにスモークは最初一斗缶で行っていたのですが、それでは用が足りなくなって、業務用を買ったのが2年前のこと。スモークチキンも作って、カフェで売っています。
――バイタリティがおありですね。一頭買いとか大型の業務用調理機器とか、家庭用にしてもカフェにしても、なかなかインパクトのあるお話です。あの隣の部屋にある冷蔵庫も大きいですね。とてもじゃないけど家庭やカフェ仕様には見えません(笑)
岩瀬:冷蔵庫は不要品としていただいたものなんですが、冷凍庫はこれもカフェを始める前に、スモークサーモンなどを保管するためにと買ったもので、マイナス60度まで冷えるんですよ。あとこれはつい先日の話ですが、ピッツァの釜を作ってもらいました。うちのピッツァは窯焼きです。
――確かにこれはもう、ご飯屋さんですね!
好きな作業は、仕込み
これからも手抜きすることなく続けていきたい
――他にも「イチから手作り」しているものはありますか。
岩瀬:味噌は自分で作っていますね。あと私の料理の基本調味料となる“めんつゆ”を始め、カラメルソースやガムシロップも自家製です。最近のヒットは塩麹。肉がさらにやわらかく、おいしくなるからやめられないです。
――レシピは何かを参考に?
岩瀬:何を作るにも目分量なので分量までは見ませんが、新しいアイデアを仕入れるためにレシピ本や料理番組は見ます。そして何か思いついたら、もうすぐにでも作ってみたくなるんですよね。いてもたってもいられなくなっちゃって、それが例え夜中でもキッチンに立っています(笑)
――今は60代もとても元気な時代。これからカフェを始めたいという方もいると思います。もしそういう方にアドバイスを求められたら、どんなことを言いますか。
岩瀬:私自身は、いい肉に巡りあったこと、それを使った料理のレシピがあったことが幸いしたと思っています。ですから、もしどなたかにアドバイスする機会があれば、「何かひとつでも自信のあるものがあれば、それが店のウリになりますよ」と言ってあげたいですね。
――カフェを始めてよかったと思うことを教えてください。
岩瀬:自分の好きなことで、たくさんの方に喜んでもらえたことが、何より嬉しいです。おかげさまで、リピート客にも恵まれています。みなさまのおかげで続けてこられました。これからも手抜きすることなく、同じ姿勢で店を続けていきたいですね。
――最後に、岩瀬さんにとってシゴトとは。
岩瀬:生きがい、です。今後もどんどん、新しいことにチャレンジしていきます!
名前 | 岩瀬千春さん |
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年齢 | 1950年生まれ |
性格 | 前向き |
趣味 | ガーデニングとものづくり(自己流) |
シゴトのモットー | イチから手づくり |
好きな作業 | 仕込み |
嫌いな作業 | 料理をテーブルに運ぶこと |
これからのこと | 手を抜かずに続けていきたい |
シゴトとは | 生きがい |
OFFICE CATI 孫田二規子(まごたふみこ)
1972年、札幌生まれ、札幌在住のフリーライター。
道内をぐるぐるしながら、やわらかいものからかたいものまで、いろいろ書いています。