くろまる
2012.12.17
何のために歌うのか?
日本一周路上ライブの旅
最高気温が氷点下4度という真冬日の夕方。横殴りに雪が吹き付けるJRの駅前で、路上ライブをしている2人組に出会った。
マイナス5度の気温の中で凍えながらギターをかきならしていたのは、札幌在住のアコースティックデュオ「くろまる」。なんと彼らは市内で路上ライブをしながら、年末までに2000枚もの自主制作CDを売ろうという目標を掲げているのだ。おまけに昨年8月から今年の春にかけては、250日をかけて日本一周を敢行したという。その間の生活費も車のローンもすべてCDの売り上げでまかなう、まさに「音楽で食べていく」ことを実行した旅だ。
なぜそんなことを? 誰もがそう思うだろう。そこで彼らに突撃インタビューを試みた。
「去年の1月に150名のワンマンライブを成功させてから『一体自分はなんで歌いたいんだろう?』って思うようになった。そんなときに東日本大震災があり、余計に自分の中には音楽をやっていく“芯”みたいなものがないなと感じたんです」と語る大木啓吾。相方の佐藤大樹とは小学3年からの友人。気心が知れている分、見えていない部分もあった。
「例えばふたりとも作詞をするんですが、実は互いの書いた歌詞を同じ気持ちでは歌っていなかったとか、そういうことに今更ながらに気づいたんですよね」と佐藤も言う。
『何のために歌うのか?』
それをあらためて探すためにギターと機材を車に積んで、ほぼ無一文で旅に出た。47都道府県をめぐって路上ライブを行うためだ。
「もう最初の50日ぐらいはずっと帰りたいって言ってました(笑)。その日CDが売れなければ食べ物も買えないし、銭湯にも行けない。そんなサバイバル生活でしたからね」(佐藤)
変化、そして進化
諦めないで前へ前へ
250日間にもわたる過酷な旅の中で、音楽と向き合い、互いと向き合った結果、彼らは変わった。
「人生観はがらっと変わりましたね。根本的に生きるということを考え直して、それが歌にもあらわれるようになった」(佐藤)
「今まで恋愛の曲を歌うにしても、ただの恋愛の歌だった。それが旅をするうちに、いろんな人と出会い、いろんな経験をして、人生で大切なものが加わった感じ」(大木)
極貧の旅だったけれども、得たものはお金に換えられないことばかりだ。最初に掲げた「何のために歌うのか?」という問いの答えはまだ出ない。いや、そんな理由はもう彼らには必要ないのだろう。
「水戸でCD売れなくて困窮してたら、オバチャンがロイヤルミルクティーくれたんですよ。そんときはすごく寒くて、そのミルクティーのあったかさがすごくありがたかった。普通に生活してるとホットのミルクティーが温かいのは当たり前だけど、そういうことを当たり前に思うのをやめたいと思いました」(大木)
日本一周の旅から戻った彼らはすぐにレコーディングを開始し、旅の思いのすべてを詰め込んだ渾身のアルバム「くろまる+47都道府県+250日=進化」をリリース。今度はそれを年内に2000枚売ることを目標に北海道で路上ライブ活動を続けている。現在の売り上げは910枚。
「これで年内に2000枚に到達しなかったら、また来年アルバムを作ってそれを2000枚手売りするために日本一周します!」
なんと無謀な計画だろう。しかし「死ぬまで音楽をやりたい。そして音楽で生活していけるようにしたい」という覚悟を持っている彼らだけに、それが夢物語ではないような気がしてくる。
先のアルバムに収録されている「TRY TRY TRY」にこんな歌詞がある。
『やりもしないで諦めないで!!
いつかきっと、今の自分を責めるから
見えない明日を待ってないで自分から動け』
苦難を乗り越え成長した彼らが歌うからこそ響くストレートなメッセージだ。
歯切れよいアコースティックギターサウンドと、佐藤の伸びのあるハイトーンボイス、大木の艶と深みのある声が魅力の「くろまる」。現在、毎週金曜日21時から、札幌市の狸小路3丁目ドンキホーテ前でライブを行っている。彼らを路上で見かけたら、ぜひ耳を傾けて欲しい。
ちなみにアルバムは札幌ステラプレイスの「島村楽器店」と、4丁目プラザ「音楽処」で購入できる。また1月27日には初のDVD発売を記念して「DVD発売記念式典ライブ」を行う。詳しくは彼らのHPをチェックだ!
くろまる
くろまる
http://kuro-maru.com/wordpress/
大木啓吾と佐藤大樹によるアコースティックデュオ。
札幌市西区発寒出身・在住。
【NEW ALBUM】
くろまる+47都道府県+250日=進化
8曲入り 1500円
路上ライブか音楽処、島村楽器札幌ステラプレイス店にて販売中
【ライブ情報】
1/27
【DVD発売記念式典ライブ】
会場:Revolver
(札幌市中央区南1条西24丁目1-8 エスターアベニュービルB1F 011-215-6949)
開場時間や開園時間はHPにて追って更新
※DVD及びライブチケットの予約開始は、2013/01/01のメルマガが送られた時点からとします。
※どちらの予約もメルマガに登録されている方を優先的に受け付けます。
※限定40人のLIVEです。
高島ユカ(たかしまゆか)
浦河町生まれ、札幌在住のフリーライター。
人物インタビュー、ルポ、企業やお店の紹介記事からおもしろ企画まで幅広く手がけます。