映画のミカタ

「黄金を抱いて翔べ」公開中

公開から日が経ってしまってすみません。

男たちによる男たちの映画「黄金を抱いて翔べ」。よく揃えたと思うよ、この面子。

ⓒ2012「黄金を抱いて飛べ」製作委員会  ※画像転載禁止

松竹配給 11月3日(土)より札幌シネマフロンティア、ユナイテッド・シネマ札幌ほかで公開中

公式サイト=http://www.ougon-movie.jp/

舞台は大阪。20数年ぶりに故郷を訪れた幸田(妻夫木聡)は、

トラック運転手をしている友人の北川(浅野忠信)に、しばらく住むための部屋と仕事先を用意された。

北川は、かつて過激派や犯罪者相手に調達屋をしてきた幸田に、

大手銀行の地下から240億円分の金塊を強奪する計画を持ちかけたのだ。

 

銀行担当のシステムエンジニアで多額の借金がある野田(桐谷健太)、

元エレベーター技師で銀行内部にも通じている掃除夫の斉藤(西田敏行)、

爆弾のエキスパート、モモ(チャンミン)が仲間に入り、

計画を知ってしまった北川の弟、春樹(溝端淳平)を加えた6人は、金塊強奪計画を実行に移すが…。

妻夫木くんは「悪人」での葛藤を経て、やっと犯罪者の役を違和感なくこなせるようになった。

役者として大きな収穫だと思う。それを実感させてくれる演技だ。

 

観る前は、浅野の存在感が他を圧倒するのかと思いきや

角刈のヘアスタイルがそうさせるのか、トラック運転手になりきっているからか、

いつもの独特なオーラは感じなかった。もしかして「リーダー」「兄貴」キャラではないのかも、普段から。

その分、抜群に光っていたのが、東方神起のチャミン。

私は韓流スターにうとく、彼の顔もまるで知らなかったのだが、さすがはアイドル。

世の女性たちをトリコにする輝きを、スクリーンで放っていた。

キラキラしとる。とても映画初出演とは思えない。

 

チャン・グンソクを見ても思うのだけれど

彼らの「光り方」は演技の上手い下手とはあまり関係がない。

もしかしたら、本人の意志とも関係がないのかも知れない。だからすごいのだと、逆に思う。

 

私は、高村薫の原作小説をはるか昔に読んでいて~今出ている改稿版ではない~

ものすごーく読みにくく、ストーリーも仔細は忘れかけていたが

観ながらうっすらと記憶が甦り、ああ、そうだったそうだった、という具合にラストを迎えた。

 

で、西田敏行は、私の好みで言うと、この役は彼でなくても良い。

これはたぶん、井筒和幸監督が西田さんに惚れ込んでのオファーだったと思うのだ。

私が井筒作品で一番好きなのはコメディ作の「ゲロッパ!」(2003年)なのだが

そのキャンペーンでインタビューの際に監督にお会いした時、

「西田さんは本物の天才や」と言ってらした。

福島県出身にも関わらず、関西弁のセリフを寸分の狂いなく話すのだ、と。

 

井筒監督って表向きはすっかりコワモテキャラで通ってるけど、

本当はシャイで、映画への情熱にあふれた方なんですよ。

(私の大好きな2人、西田敏行&岸部一徳コンビが歌って踊る

ファンキーな「ゲロッパ!」を見逃してる方はぜひ、DVDでご覧あれ)

 

監督自身が長く映像化を熱望していたという作品だけあって、今回は「笑い」や「余白」がほとんどない。

男たちの魅力を際立たせることに集中し、ハードボイルドに徹して撮り上げた、硬派な一本だ。

「黄金を抱いて翔べ」

11月3日(土) 公開

2012日本松竹2時間9分

井筒和幸監督

妻夫木聡、浅野忠信、桐谷健太、溝端淳平、チャンミン、西田敏行ほか 出演

矢代真紀

WORD WORK  矢代真紀(やしろまき)

1968年、稚内生まれ、札幌在住の映画ライター。
編集プロダクション兼出版社に12年間勤務し、2001年に独立。
これまで23年間札幌の試写室に通い、作品紹介やインタビュー原稿を執筆。